みんなの暮らしと工夫

就労の悩み⑤

ほかの患者さんの経験を知ることで、自分の悩みを解決する糸口を見つけたり、ヒントを得ることができます。是非、ご参考ください。

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最近よく「多様性」という言葉を耳にします。先日行われた潰瘍性大腸炎・クローン病の患者さん向けのオンラインセミナーのテーマも、「多様な働き方・生き方」という時代を反映したものでした。さまざまな経験をお持ちのパネリストのお話が、とても勉強になったのでシェアします。

『IBDとともに働き続けるコツ〜多様な働き方・生き方編②〜』パネルディスカッション

ファシリテーター 就労支援ネットワークONE代表 中金竜次さん

パネリスト

Jackさん(40代)20代で潰瘍性大腸炎を発症。2回の転職を経て、現在は日系の自動車関連企業の技術者としてアメリカ駐在5年目。営業、グローバルマーケティングなども担当。 みくろんさん(30代)20代でクローン病を発症。出版流通業界の企業に勤務、2021年に第一子出産、産休育休を経て、現在は仕事と育児と家事でてんてこ舞いしながら奮闘中。 KUBOさん(30代)20代で潰瘍性大腸炎を発症。大学の薬学部、大学院を卒業後、大学病院での勤務を開始。現在は大学教員(研究職)と大学病院の薬剤師を兼任。

※パネリスト名は、すべてハンドルネームです。

病気の発症から就職・現在に至るまで

みなさん病気を抱えつつ社会で活躍されていますが、どのような経緯で確定診断を受け、その後、どのような経緯で現在に至られたのか、振り返って教えていただけますか。

私は大学時代から海外で働きたいという思いがあり、日系の自動車関連企業に、自動車部品の設計・技術者として就職しました。
その後、入社3年目ぐらいから、何かお腹の調子が悪いなというところから始まって、下血もするようになり、病院でいろいろな検査を経て、潰瘍性大腸炎と診断されました。
私は高校1年生の時に父親を大腸癌で亡くしていましたので、最初は癌じゃなくてよかったというのが正直な気持ちでした。病気は軽症でしたので、ほとんど一般の人と同じように働くことができました。
その後、2回転職をし、3社目にして念願だったアメリカに駐在することが叶い、今年で5年経ったところです。

2014年に新卒で出版流通業界の企業に就職をしました。当時は、クローン病という病名さえ知らない状態でしたが、今思えば、就職して2、3年ぐらいからうっすらと症状が進行していった感じです。
私の場合は、便秘気味なところから始まり、便秘が苦しい状態が1年、2年続いたところで、検査のために仕事を休んで病院に行き、確定診断となりました。
その後、手術のための入院で1ヶ月半ほど仕事を休むことになりましたが、手術後は無事に元の会社に復帰でき、定期通院を続けています。今は特に症状はなく、寛解を維持したまま働くことができ、2021年には第1子となる女の子を出産。産休育休を経て、仕事に復帰し、仕事、育児、家事でてんてこ舞いの日々を送っています。

私の場合は、ちょうど大学院に進学をし、さあそろそろ頑張るぞと思っていた夏頃に潰瘍性大腸炎を発症、確定診断となりました。
確定診断後は、ステロイドでなんとなく良くなりつつも、ステロイドを減らすとまた悪化してというふうに、なかなか病気が治まらない状態で入退院を繰り返しました。
膵炎になったり、潰瘍性大腸炎が悪化してお腹の中に便が詰まってしまったりなどいろいろありつつも、周りの方々に支えていただきながらなんとか大学院で博士号を取得し、現在は大学教員(研究職)と大学病院の薬剤師を兼任して働いています。

[テーマ1]職場には、病気について開示されましたか?

「診断が確定した時点で直ちに上司に開示、相談した」

私は3回転職をしておりますが、1社目では、診断が確定した時点で直ちに上司に報告しました。海外に行きたいという思いが強かったので、病気が原因で海外駐在ができなくなる心配を払拭するためには、やはり、まず上司に話して、相談するべきだという判断でした。その結果、3年後には、主治医が判断して大丈夫ということであれば行っていいよということになりました。
ただし、2社目、3社目の転職の際には、履歴書の健康状態の欄には、「腸炎」と書きました。そして、面接で正直に潰瘍性大腸炎であることを話し、業務にどれくらい影響するのかを正しく丁寧に説明し、理解していただきました。
また一生治らない病気だけど、自分の場合は、薬とも上手く付き合えているので多分問題ないと思います、というふうに相手に安心感を与える説明も意識しました。

「上司に開示して、あたたかい配慮に感動した」

私の場合は入社してから発症したのですが、入社して3年経ち、職場での人間関係を築けていた頃だったので、検査で度々会社を休まなければいけないとなった時も「今は原因が分からないのですが、このような不調で検査が必要で通院するので、度々仕事を休むことになります」と相談し、理解していただけました。
また、確定診断がついた際は、すぐに直属の上司と部長にクローン病であることを開示しました。どんな病気か細かく伝えたわけではなく、消化器の炎症が原因不明で起きる難病ですと伝えました。宴会や立食パーティーの際などに、部長からさりげなく「食べられるもので楽しんでね」と言っていただき感動したことを覚えています。

「直属の上司に伝え、周囲にも分かりやすく伝えた」

私は、確定診断がついた時にすぐ、両親と当時の指導教官だった教授に潰瘍性大腸炎であることを伝えました。
だんだんと周囲にも「KUBOは潰瘍性大腸炎だよ」ということが広まりましたが、悪い反応はありませんでした。そこで、大学病院の薬剤部に入った際にも大学教員に入り直す際にも、自分の持病のことは周囲に全て伝えよう、開示しようという方針で進んできました。
ただし、説明の仕方は相手によって変えるように考えました。直属の上司は、ほとんど全員薬剤師なので、内視鏡像もお見せして今の私の所見はこのような感じですというふうに伝えました。家族の場合は、例えば食べることに問題が出たり、お酒が飲めなかったりというタイミングもあると思うけれども、そんなに心配しないでねというふうに、やさしく話すことを心がけました。

【病気の開示】
ディスカッションサマリー

・面接時に分かりやすく伝える
・上司だけでなく、共に働く周囲にも伝える

職場の人に病気のことを伝える・伝えないについては、多くの方が悩んでいらっしゃいます。パネリストのみなさんは、最初から開示して、上司に相談することで適切な配慮をいただいているようですね。

[テーマ2]就職・転職を考える際、どんな仕事(職種)が向いていると思いますか?

「病気と上手く付き合えば、出張の多い仕事も可能になる」

私の場合もそうですが、トイレの頻度が多くなりがちなので、事務職や実験などの開発・技術系の仕事は、よい気がします。
また症状がすごく重い方だと、営業など外出の多い仕事や出張の多い仕事、例えば飛行機に何度も乗らなければいけないなどの仕事は少し辛いかもしれません。
ただ、病気と上手く付き合う、自分が何をするとどうなるかということを理解していれば、乗り越えられることも多いと思います。
私は飛行機に乗る前後は一切物を口にせず、落ち着ける時に食べるように工夫しています。

「デスクワークで、自分らしくいられる仕事」

デスクワークはよいと思います。私は事務職なので、いつでもトイレに行ける環境にありますし、体力も消耗するほどではなく、自分のペースで働ける環境にあり、とてもありがたいと思っています。
さらに職業選択ということでいえば、IBDであっても、自分らしくいられる環境が一番大事なのではないかと思います。
これは私がクローン病を開示した際にも感じたのですが、自分らしく働くためには、何か気になることや不満があったら、それを身近な上司や話しやすい先輩に相談するなど、自分から働きかけるということも大切だと思います。

「トイレに自由に行ける環境はすごく重要」

私もトイレに行ける環境かどうかは、仕事選びにとってすごく重要だと思います。薬剤師業務でいえば、どうしても無菌室に入って半日出られない、あるいは今回コロナ禍もあり、一日中PPE(個人用防護具)装備をして外に出られないという際は、ずっとドキドキしますし、大人用オムツを履いたりするなどの工夫も必要です。
特に薬剤師の場合ですと、点滴のお薬が入ったダンボールを何個も移動させなければいけないときには、体調が悪いと「今お腹に力を入れたらきついなあ」と思いながらやることもあります。それでも、周囲の理解があれば対応できることも多いので、自分がやりたいものがあって、その中でどういうふうに折り合いをつけていくことができるのかと考えていくのが、仕事選びで大切だと思います。

【向いている仕事】
ディスカッションサマリー

・トイレに行きやすい環境が整った仕事
・病気と上手く付き合えば、仕事の選択肢を広げることも可能

IBDの患者さんにとって、仕事選びは大きな問題の一つです。対処するというのは、コーピングと言ったりしますが、パネリストのみなさんは、それぞれ自分なりの対処法を見出して、やりたい仕事で頑張っておられますね。

[テーマ3]困っていることは?

「休みが少ない中での気持ちのコントロール」

私の場合、教員の業務は裁量労働制なので、定時というものがなく、今日はお腹の調子が悪いなという時でも、仕事を終わらせないと帰れないことがあったりします。ただ、コロナ禍で会議もオンラインでできるようになり、そこが徐々に改善されています。
飛行機の移動は、客室乗務員の方に事前に潰瘍性大腸炎であることを伝えて、トイレ使用可のアナウンスがない場合でも呼べば対応しますと言っていただいたりします。
また働き始めて気づいたのは、土日の休みが治療でつぶれてしまうこともあり、休みが少ない中でどういうふうに気持ちをコントロールするか、そこも困ることの一つだと思います。

「便秘症状が酷い時は、席を立って廊下に出る」

便秘症状が酷かった時はお腹が張りやすく、不意にお腹の音がしたり、溜まったガスを出したいという時は、かなり困りました。静かな職場なので、確実に周りの席の同僚に聞こえてしまいますし、それは恥ずかしいので、そんな時は席を立って廊下に出てしのいでいました。
また、歓送迎会など職場の飲み会も困ることの一つではあります。自分が食べられるものがなさそうなお店の時は参加を見合わせるのですが、やはり職場のみなさんに申し訳なく感じることがあります。

「日本とアメリカの保険と病院のシステムの違い」

2回の転職実績があるとはいえ、もし再度転職するということになった場合、潰瘍性大腸炎はハンディとはなりますが、それをカバーするために、相手の立場になって、どれだけその会社に貢献できるかをアピールしなければいけない。それはキャリアにとっての大きな問題事の一つです。
また治療でいえば、今まさに困っていることは、アメリカは国民皆保険というものが無く、民間の会社が取り扱っている保険に入らなければいけないことです。アメリカは医療がかなり進んでいて、薬も揃っているのですが、保険や病院のシステムの複雑さゆえに、投薬が遅れるといったことが多々ありますので、アメリカで働く中で、それは本当に困っています。

【困っていること】
ディスカッションサマリー

・休みが少ない中で、どう気持ちをコントロールするか
・仕事中や移動の際、不意に症状が出た時にどう対処するか
・キャリアの積み上げ方と海外で働く際の通院・治療について

病気を抱えていると、仕事だけでなく、職場の人との付き合い、転勤や海外赴任などでの保険や治療の不具合など、さまざまな悩みがあると、パネリストのみなさんのお話を聞いて、あらためて気付かされました。

[テーマ4]再燃しないために工夫していることは?

「ニコニコと毎日を過ごす」

潰瘍性大腸炎という病気は痛みもありますし、羞恥心を刺激されてしまうようなイベント(症状)も起こりやすいので、いろいろなことに怒りや不満が出てきやすい疾患の一つだと思います。しかし、怒ったところで何かが良くなるわけでもないですし、むしろストレスが再燃のリスクになるといわれていますので、ニコニコと毎日を過ごすというのは、一つ心の持ちようとして必要だと思っています。
私の場合は、ストレスが溜まるとカラオケに行って思いきり歌うなど、好きなことを楽しむ時間をつくるようにしています。

「日々の生活と体調を記録して、自分の傾向を知る」

再燃させないためには日々の生活と体調の変化を記録しておくのは一つの方法かなと思います。体調が悪くなり始めた少し前から、何を食べたかとか何をしたかなどの記録を見て、すぐには何が原因か分からなくても回数を重ねていくうちに、自分の場合はどうやらこうするとよくないんだなという傾向が分かってきたりします。

「食事をきちんと制限し、メリハリのある一日を過ごす」

子供が生まれてからは、より体調を崩してはいけないという思いが強くなりました。この5年で自分が何を食べたらお腹を壊しやすいのかということも分かってきましたので、それをきちんと制限しながら、体調のいい状態を保っていこうと思っています。
またストレスについていえば、仕事と家事に育児も加わり、なかなか自分の時間が取れなくなってきた中でモヤモヤすることもありますが、だからこそ、ちょっとできた隙間時間を思いきり楽しんだりのんびりしたりして有効活用、メリハリのある一日を過ごすよう心がけています。

【再燃しないための工夫 】
ディスカッションサマリー

・ニコニコと毎日を過ごす
・日々の生活と体調の変化を記録し、自分の傾向を知る
・食事を制限しつつ、自分の時間を大切にする

再燃させないためには、治療だけでなく、ストレスを溜めない生活や食事の管理も重要。パネリストのみなさんの工夫を参考に、ご自分なりの傾向やストレス解消法をぜひ見つけてください。

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